「残留農薬等のポジティブリスト制」移行に伴う食用加工油脂製造業界の対応について

消費者、ユーザーの皆様方には、日頃、マーガリンやファットスプレッド等食用加工油脂製品をご愛用いただきまして誠にありがとうございます。

さて、表題の「残留農薬等のポジティブリスト制」が我が国でこの度実施に移されるに至った経緯を見ますと、これまでの規制では残留基準が設定されていない農薬等を含む食品に対する規制は困難との見方が従来からありましたが、平成7年の食品衛生法改正の際、国会で、今後ポジティブリスト制度（残留基準が設定されていない農薬等が残留する食品の販売等を原則禁止する制度）の導入を検討する旨の付帯決議がなされました。その後、輸入食品から違法な農薬の残留が数多く発見されるなどの事件が起こり、平成15年の法律改正において、生鮮食品、加工食品を含めてすべての食品を対象とした「残留農薬等のポジティブリスト制」を平成18年5月29日より実施することが定められました。

マーガリンやファットスプレッド等の食用加工油脂製品におきましては、消費者、ユーザーの皆様方から寄せていただいております信頼にお応えし、より一層ご満足いただけるよう、当工業会会員の食用加工油脂メーカー各社は細心の努力を弛まず続けてきております。そして、この度の「残留農薬等のポジティブリスト制」実施に際しましても、会員各社の対応努力はもちろんのこと、食用加工油脂製品の「安全と安心」を確固として維持継続していくために、業界団体としての当工業会といたしましても出来うる限りの努力を行ってまいる所存です。

新しい制度の下で、残留基準が示されていない加工食品の取扱に関して、厚生労働省より発表された「ポジティブリスト制度について　Q＆A」（平成18年3月）では「残留基準の設定がない加工食品については一律基準による規制の対象となるのが原則ですが、加工食品の原材料が食品規格に適合していれば、その加工食品についても残留農薬等の残留値によらずに食品規格に適合するものとして、一律基準の規制対象とならないものとして取り扱うこととしています」（問76の答より抜粋）と述べられています。

これを踏まえて、先ず、食用加工油脂製造の際の主原材料となる植物性油脂並びに動物性油脂に関しましては、供給元であるそれぞれの製造企業等におかれてはその原材料から最終製品に至る一連の製造・加工工程において、本件関連の諸課題に関し従来適切な処理が行われてきているものと理解しており、今後とも引き続き、関連情報の収集に努めて参ります。

食用油脂精製工程中での農薬類の挙動については、これまでも当工業会としまして種々検討してきております。その科学的知見として、仮に原材料に残留農薬類があっても、一連の食用油脂精製工程の中で特に脱臭工程で揮散や熱分解して著しく減少することが確認されております。（注を参照）

そしてこの度、当工業会としまして、本件関連の諸課題の一端について当業界ベースでの自主的な取組みを行いました。即ち、当工業会会員各社が現在主原料として使用している動物性油脂（牛脂、豚脂、調製食用脂、乳脂、バター、硬化魚油等）と一部の植物性油脂（パーム油、パーム・オレイン、パーム核油、ヤシ油等）について、ポジティブリストに記載されている内の農薬187品目について（財）日本食品油脂検査協会に依頼して検査いたしました。結果は上記のいずれも基準値以下でした。（詳細は別紙参照）

以上のように、当工業会会員各社の食用加工油脂製造における農薬等の残留については、以前から既に十分に吟味されてきており、何ら問題はないものと考えております。

今後、残余の農薬等に関する「公定検査法」が行政より明らかにされることが予定されており、また上記「検査協会」における検査体制の整備が進むことと相俟って、当工業会としましては追加的な自主取組み等関連諸情報の収集と伝達に努めて参りたいと考えております。

今後とも、マーガリンやファットスプレッド等食用加工油脂製品を変わらずご愛顧下さいますようどうぞよろしくお願い申し上げます。